人生は夕暮れから面白い

冒険心と感動を持たない人生はつまらない

心に抱えていた懺悔すること

 長年すっかり忘れていましたが、ふと子どもの時を振り返ったとき・・、些細とは言えないいたずらに、未だに後悔することがあります。

 別に誰を殺めた訳でもありませんし、窃盗などをした訳でもないのですが、自分でもこれはひどい・・・と言う出来事です。

 子どもの頃、ワタシの住んでいた近所に古い瀟洒な洋館建てのウチがありました。その頃でもかなり古びて、怖い雰囲気があったにしろ、丸い窓に2階にテラスと随分ハイカラな建物の名残は秘めていました。

 その洋館に年老いたご夫婦が住まれていました。もともとその洋館はある大手の企業の持ち物でしたから、何かしらの役についておられた方であったと思います。お名前はOさんと言われる高知県出身の方でした。

 ワタシ・・・、小学校3年生の秋にその洋館の外にあった花壇の中に、ひっそりと置かれていた水道のメーターを割ってしまったのです。

 別にいたずらをしようとか言う気持ちではなかったのです・・。丸い水道のメーターの蓋を開けたときに、いくつかの小さい針が動いていて、その不思議さにとらわれてしまったのです。

 悪い事に、猫面みたいな悪ガキにが側にいて、

「おい、このメーターの中には水が入っているのか、それとも針だけなのか知りたいと思わないか?。」の言葉に、

「知りたい・・・、メーターの中に水が入っているのか、入っていないのかどうしたらわかる?。」

「割って見るしかないなあ・・・。」

 ワタシは大きな石を探し出し、それで石を何度も打ち付けてはメーターを割ろうとしました。

 水道のメーターって、まさに強力な防弾ガラス並なんですよ・・。子どもの力ぐらいで割れるものではないのです。

 しかし、何十辺も石を打ち付けていると、だんだんかすかにヒビが入りだし、そこをさらに打ち付ければ中央に一センチあるかないかの小さな穴が開き、それを見つめていれば水が流れ出してきて、止まること無く小一時間の間に周囲は水びたしになってしまいました。

 もう慌てて猫面は、

「オレは知~~らない、オマエがやったんやからな・・・。」

と逃げ帰り、ワタシも後悔にとらわれたまま、そのままウチに帰りました。

もうその日の夜は寝れなかったですよ・・、びくびく・・ドキドキ・・・おどおどして、こんないたずらがわかったら、きっとオヤジにはどやしつけられるだろうし、オカンにはドツキ回されると思っていました。

 夜の間もその水道のメーターが気になって仕方ありませんでした。

 次の日、学校に行く前にそこを通ればあふれた水が道路を一面にぬらしていました

 猫面はひそひそと分団の連中に「あいつがやったんやで・・・。」と告げ口しているようで、ワタシはまさに生きたここちがしなかったです。

 些細な疑問の解読が、他人さんに大きな迷惑をかけたのですからね・・・。

 その老夫婦のご主人が、

「誰がこんなことしたんだ・・・。」と激怒されている場面も実はこの時に見ていたのです。

 

 水は4.5日あふれていました・・・。もう心臓がパンクしそうになった時、学校の帰りにそこを通ったとき、道路が乾いていて水が止まったことを知り、この時ほど安堵したことはなかったです。

 やれやれ・・・という気持ちでした。

 でも、親にも誰にもこのことはとうとう打ち明けたことはないままでしたね。

 

 この事件が収まってある日、洋館のご主人がウチを訪ねてきました。実はこの話を持ってこられたのではなく、何らかの連絡に来られたのですが、ワタシに取ってはまさに青ざめる出来事でしたね・・・。

 母親と、O氏が話をしている間、固唾を飲み込んで二人の話を聞き、じっと固まっていました。

「Oさんのところ大変やったね・・・。もう収まらはったん?。」と母親。

「一応、水道屋に来てもらって修理をしてもらいましたよ・・。近くで子どもが何人か遊んでいたから、てっきり子どもの仕業だと思ったのですが、水道屋が言うにはあんな堅いガラスは子どもでは割れないと言ってましたしねぇ・・。それにしても高い出費につきましたよ・・。」

 水道代と修理代を含めて2万数千円かかったということでした。この当時は大卒の初任給が1万5千円程度の時代です。

 近くの中小企業で働いている名も知らぬ 中卒のアンちゃんの給料が5千円という時代です・・・。

 本人が言ってましたね・・。

「おい、チビどもオレは給料もらったんだぞ・・。」

「わあ・・、いくら?。」

「五千円・・・。」

「わぁ・・、すご~~~。」

 それからしばらくは、大変な迷惑をかけたことをずっと心に抱えていましたよ・・・。探究心がいくら心にはやっても、善悪の区別はしっかり考えるべきでした・・・。

 

 もうこの洋館も、築100年は経っていた実家も今は無く高層マンションに建て変わり、もう思い出の域に入ってしまいました。猫面も何処かに転居してこのことを知っている物は誰もいません。

 もうこの洋館に住まれていたご主人はワタシが小学校を出る頃に亡くなられ、奥様も郷里に帰られたようです。子どもさんも無い2人だけのご夫婦でした。きっとすでに奥様も亡くなられているのだと思います。

 今であれば、子どもの時の事とは言えきちんとお詫びして、水道代のご返済もさせて頂いて・・・と思うのですが、それすらもすべき手立てが見つかりません。

 このご夫婦のご冥福を祈らせて頂くことしかできないです・・・・。

 

 それにしても不思議なんですよねぇ~~、ずっと何十年もの間、半世紀の間ですよ・・・忘れていた事をどうして思い出したりしたのでしょうねぇ・・・。

 ひたすらしきり後悔です・・・。(涙)

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